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土壌物理性のストライクゾーンを狙え! 土壌物理性診断

土壌の物理性診断、始めました。

土壌分析と言えば肥料成分の量やEC値pHなどを連想されることが多いと思います。これらも非常に重要ですが、弊社ではさらに土壌をよく知るために土壌の三相分布や土壌硬度の測定もおすすめしています。
やりかたとしては、現地の土壌に50~60cm程度の穴を掘って、そこから直接100ccの円筒に土壌サンプルを採取します。それを実容積計という(高価な!)分析機にかけることで、気相率と実容積(液相+固相の容積)がわかります。更にこのサンプルを完全に乾燥させることで液相率がわかり、気相・液相・固相の三相分布が判明する仕組みです。
また、サンプル採取を行うための掘削の過程で、土壌の各深さにおける土壌硬度も同時に測定していきます。この測定には山中式土壌硬度計と言う(その筋では大変にポピュラーな)器具を用います。また、測定した残土を用いて腐植含量も測定しますので、奥行きのある診断が可能です。

土壌掘削のポイントは、事後処理を想定すること

この診断で最も楽しく、かつ苦労するのは掘削の段階ですが、埋め戻しのことを考えながら掘る必要があります。土壌は上から下まで同じ性質の土が詰まっているわけではなく、浅い層と深い層では土質や水分、含有している成分などが大きく異なる場合があります。安易にこれを天地返し、あるいは混合してしまうと、掘削した部分だけ植物の生育が異常になる場合があります。そうならないためにも、掘り出した土は深さに応じていくつかの小山に分けておき、埋め戻し際にはそれを深い順に(掘るときの逆の順番で)穴に戻していくようにします。また、穴を掘った個所は植物の樹勢に変化が出る可能性があるため、(お客様の大切な圃場ですので)原則として生産者様ご自身に掘削していただくことをお願いしています。

土壌物理性診断のメリット

さて土壌の硬さと三相分布がわかると、どのようなメリットがあるのでしょうか。1番は、土壌改良の目標が明確になることです。一般的に土壌の固相率は40%以下、土壌硬度は作土で10~15くらいが目安です。カーネーションの圃場の事例では固相率43%未満かつ土壌硬度17.5未満で根張りの良い圃場が多かったそうです(上図)。両方を満たしていないと根張りが悪くなることがある、逆に言えば根張りが良くなるストライクゾーンが存在しているということになり、多くの作物でこの傾向は当てはまると思います。また、土壌硬度は土壌の深い層ほど高くなっていく傾向にありますが、生育が悪い圃場では比較的浅い層で高い土壌硬度の層が出現することがあります。
これらの数値を目標に(モミライトなどの)土壌改良材を入れる量とすき込む深さを検討していきます。土壌改良材の量が必要なのか、それとも鋤き込む深さが重要なのか、それがポイントです。ちなみに、土壌の物理性が非常に優れていても、腐植含量が不十分な圃場では良好な収穫が得られない場合があります。そのような圃場でも、毎年コツコツと土壌改良材を入れていただきたいと考えています。

土壌物理性診断測定器具と生育不良圃場の診断事例

現状を知って、ゴールへの正しい地図を描く

やはり重要なのは、圃場の特性を知り、弱点を補強するような対策を打つことだと思います。スタート地点を把握することで、初めてゴールへの正しい地図を描け、最高の成果に近づいていけるのだと考えております。(このあたりのお話は、「何はともあれ土を知る!土壌分析のススメ」のページでご紹介した「ドべネックの要素樽」の話もあわせてご覧ください。)土壌の物理性については意外と意識されていない部分かもしれません。機会があったら分析されることをおすすめします。

株式会社ホーネンアグリ 土壌医 坂野

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