スタッフブログ
Staff Blog

腐植とは何か ~その恩恵と維持の要点~

そもそも、腐植って何? 言葉の定義

じつは、「腐植」という言葉の定義はちょっと複雑で、誤解を招きやすい部分だと思っています。まずはこのページのトップの画像をご覧いただきながら、腐植の定義について整理しておきましょう。

広い意味での「腐植」
「土壌中に存在する有機物のうち、新鮮な植物遺体と微生物を除いたもの」をさします。生きていない、分解途中の有機物全体といったイメージですね。その種類も量も膨大なものです。

腐植物質
 上記の広い意味の腐植(動植物遺体や新鮮有機物)が分解されていくと、これ以上分解できない物質に変化していきます。また、その一部は変質し、金属や粘土物質と複雑に組み合わさって、泥炭のような暗色の物質を形成します。この物質を「腐植物質」と呼びます

腐植酸など
 腐植物質は酸やアルカリに溶けるかどうかで更に分類されます。
 (1)ヒューミン アルカリに溶けない
 (2)フルボ酸 アルカリに溶け、酸に溶けない
 (3)腐植酸(フミン酸) アルカリに溶け、酸にも溶ける
 フルボ酸、腐植酸は植物根の生育に関わっていると言われています。弊社ではこの腐植酸等に特殊加工を施し、水に溶ける状態にした「アクアフミン」シリーズを開発しました。
 より詳しくは、当ブログの記事「水溶性腐植の可能性!~植物に対するメリット~」「水溶性腐植酸アクアフミン」商品ページをご覧ください。

アクアフミンリキッドは送料無料
使い方や詳しい情報はこちらです
水溶性腐植資材アクアフミンの詳細情報はこちら

 いかがでしょうか。「腐植」というワードがいろいろなところに出てくるのでちょっと混乱しますよね。ですが、土壌分析や技術資料を読み解く際に、これらの区別を知っていることはとても重要なことなのです。
 たとえば、「腐植が〇〇%」といった話をするとき、上記のどれを指すのでしょうか。土壌中の腐植を分析するとき、全炭素の測定値から推定する方法がありますが、その場合は広い意味での「腐植」を指しています。また土づくりでよく「腐植が大切」と言われますが、この場合は「腐食物質」や「腐植酸」を指していることが多いと思います。

多岐にわたる腐食の恩恵

腐植の恩恵(ありがたみ)は本当にいろいろあるので、箇条書きにします。

①土壌緩衝能の向上
 土壌緩衝能とは、土壌が様々な化学的変化を(クッションになって)受け止めてくれる能力のことです。この能力はCEC(塩基置換容量)という数値で表現され、一般的に腐植の量が増えるとCECが高くなり、保肥力(肥料を蓄えるちから)が向上します。また、植物にとっては土壌のpH(酸度)は安定しているほうが良いのですが、腐植の多い土壌はpHが変動しにくい傾向にあります。これは植物の生育環境を安定させることにつながります。

②土壌の団粒化促進
砂や粘土の微粒子が寄り集まって、団子のような粒子を形成することを「団粒構造」といいます。団粒構造は土壌の通気性・透水性を確保し、植物根の健全な成育にとって非常に重要な要素です。この構造のもっともミクロな(小さな)単位は、土壌中の砂粒と砂粒が腐植物質や微生物などで接着された物です。この小さな粒が寄り集まって、さらに大きな粒子を形成し、ひいてはフカフカで柔らかい土壌となります。腐植と微生物は団粒化の重要な基盤といえます。

③地力窒素の発現
地力窒素とは、土壌が有機物を分解する過程で蓄えた窒素のことで、化学肥料のような即効性はありませんが、作物に対してじわじわと栄養を供給します。
腐植が高い圃場は、地力窒素(可給態窒素)が高い傾向にあります。地温が高くなると地力窒素が発現し、作物によっては植物が肥料を欲しがっている頃に自動的に追肥する機能のようにはたらきます。
※植物が窒素を要求するときに地力窒素の発現が重なるのが理想ですが、過剰な地力窒素が作物の品質・収量をかえって損なう場合もあるので注意が必要です。地力窒素の発現する時期と作物の栄養吸収パターンの相性が重要です。

④リンサンや微量要素の効果を高める
腐植酸の一部は土壌中でキレート効果を示します。キレート効果を簡単に言うと、有機物が金属イオン(固形物)を挟み込むように結合し、ふわふわと水に溶ける状態にする作用のことです。生物が両手のハサミでつかむ様子を連想することから、「蟹のハサミ」を意味する「chela」から「キレート」と名付けられました。
土壌中の鉄やアルミニウムは、リンサンや微量要素と結合して植物が吸収しにくい固形物に変えてしまいますが、腐植酸は土壌中のアルミニウムとキレート化合物を作り(つまりアルミニウムとリンサンを切り離し)、リンサン等を吸収しやすい「自由な」状態にします。つまり、肥料の効果を高めます。(キレート効果と水溶性腐植については、当ブログの「水溶性腐植の可能性!~植物に対するメリット~ 」も併せてご覧ください。)

キレート効果の模式図
リン酸や微量要素の効果を高めます

水溶性腐植酸のキレート効果については
こちらをご覧ください
水溶性腐植資材アクアフミンの詳細情報はこちら

⑤根の成長促進
腐植物質に含まれる腐植酸(フミン酸)やフルボ酸は植物の発根を促進する効果があると言われています。

腐植は放っておくと、どんどん減っていく

ところで、土壌の腐植含量を測定する際、一般的には全炭素を測定した値から計算して求める方法が普及しています。これは、土壌中の炭素の量と腐植含量には強い相関がある(つまり、炭素が多いと腐植も相応に多いと考えて良い)ことによります。
上の図は、堆肥使用・不使用の圃場で全炭素を測定した研究のデータですが、堆肥を使用しない(化学肥料のみの)圃場では、全炭素が自然減少しています。つまり、腐植が自然減少していくということになりますね。

腐植を維持するために必要な堆肥の量は、一般的に10aあたり2t程度だと言われています。結構な量です。堆肥が必要なのを知ってはいても、コストや手間の関係で入れることができず、気づいた時には地力が低下して・・・という圃場も多いと聞きます。

じっさい、生育・収量の悪い圃場では腐植含量が低下していることが少なくなく、新潟県でキュウリの生育が悪いハウスを診断した事例では腐植含量が2%未満とかなり低くなっていました。

逆に言えば、そこを改善すればリターンが大きい可能性が高く、圃場の腐植含量を測定するメリットは大きいと思います。ご興味のある方は、いちど土壌分析されることをお勧めいたします。

腐植含量の適正値は土質と作物によって異なる

腐植含量の適正値は土質によって異なります。

一般的な畑作・ハウスなどの場合、黒ボク土で6%以上非黒ボク土で4%以上が目安で、少なくともこの水準は維持する必要があるでしょう。(この場合の腐植含量は、広い意味の腐植を指します。)

ただし、腐植含量が高ければ高いほど良いというわけではありません。果樹の場合、腐植含量が高すぎると品質・収量が低下する場合がありますし、コメの場合も腐植が高すぎると倒伏や食味・収量の低下を招くことがあります。腐植の適正値は産地の自然条件や作型などによって異なりますので、同じ産地・エリアのなかで生育の良い圃場の数値を参考にすると良いでしょう。

その圃場の腐植含量の目標値を決め、それに向けてコツコツと有機物(堆肥・土壌改良材等)の施用を継続していただきたいと思います。弊社の土壌改良材では「スーパー越の有機®-2号」や「有機王®」が長期的な腐植の補給に適していると思います。また、水溶性腐植酸のキレート効果でリン酸等の肥料の効果を高め、植物の健全な成育を促す資材「アクアフミンリキッド」シリーズもあります。ぜひお試しいただきたいです。

株式会社ホーネンアグリ 坂野(土壌医)

アクアフミンリキッドは送料無料
商品のご購入はこちらから
水溶性腐植資材アクアフミンの詳細情報はこちら

アーカイブ