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水溶性腐植の可能性!~植物に対するメリット~

腐植物質と腐植酸、水溶性腐植

腐植物質は有機物質が微生物によって分解された際に生成される化合物の一種であり、通常は茶色や黒色を呈する物質です。pHの異なる水に対する溶けやすさによって腐植酸(俗に言うフミン酸、humic acid)、フルボ酸、ヒューミンなど呼び名が異なりますが、いずれの場合でも土壌の物理的・化学的性質にとって重要な役割を果たしています。(詳しくは当ブログの記事「腐植とは何か ~その恩恵と維持の要点~」をご覧ください。)

腐植物質には様々な形態があるのですが、その中でも水で溶ける水溶性腐植の役割がかなり重要なのではないかと考えています。というのも、腐植酸(フミン酸)を取り出すときには強いアルカリ剤を使うのですが、そんな特殊な物質が土壌中に常に豊富にあるものでしょうか?・・・それはちょっと無理がある気がします。実際の圃場においては、どこにでもある一般的な水で溶ける腐植物質こそが速効的な影響力をもつと考えるほうが自然です。

水溶性腐植のはたらき

水溶性腐植の効能として最も期待できるのが「キレート作用」だと思います。キレート作用とは、物質が化学的に金属イオンを捕捉して(ハサミで捕らえる!という表現を使われることがあります)安定な錯体を形成することです。水溶性腐植がもつカルボキシル基やフェノール基などが金属イオンと結合することでキレート化合物を形成することができ、このことが生育に有利にはたらきます。
例えば、鉄イオンは土壌中で不溶性の酸化物やリン酸鉄として存在することが多く、植物の根に吸収されにくい状態になっています。しかし、水溶性腐植によってキレート化合物を形成することで、鉄イオンを溶解性の高い形に変換することができます。これにより、植物は鉄イオンをより効率的に吸収することができるのです。

キレート効果は肥料の吸収性を高める

同じ理屈で、水溶性腐植にはリン酸や、鉄、マンガン、亜鉛、銅などの微量要素の効きを良くするはたらきがあると考えられます。水溶性腐植のキレート作用は土壌中の栄養素の「動きやすさ」を高め、これによって微量要素などを充分に活用できた植物は、結果的に良好な生育を示し、病気や環境に強い体を手に入れられる確率が高くなります。それに加えて、水溶性腐植は土壌中の微生物の活性化を促進することができ、植物の根に有益な微生物を増殖させることが知られています。

水溶性腐植の可能性

水溶性腐植のメリットは地表面に散布するだけで地下への浸透が期待できるという点にもあります。水に溶けることで土壌に対して速やかに浸透・拡散できるというわけですね。「まくだけで」お手軽に土壌の力を引き出し、生育を改善できる可能性があり、非常に魅力的だと思います。弊社では腐植に特殊な加工を施して水に溶けやすくした水溶性腐植を開発しており、これを活用した土壌改良技術の研究・開発に積極的に取り組んでおります。ご興味のある方は是非ともお問い合わせください。

株式会社ホーネンアグリ 坂野(土壌医)

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