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もしも培土が余ったら ~培土の保管方法と時間経過に伴う変化~

こんにちは!株式会社ホーネンアグリの坂野秀人です。春は育苗や培土の季節ですね。弊社では培土の製造・出荷がフル稼働しており、多くのお客様や運送会社様にご来社いただいております。この時期は多くのお問い合わせをいただく時期でもあります。先日「培土が余ったらどうしたらいいですか」というご質問をいただきました。確かに余った培土の保管方法や、長期保管に伴う品質の変化など、ご心配されることもあるでしょう。ですので、今回は培土の保管方法と時間経過による変化についてご説明したいと思います。

培土保管の大原則

弊社の培土製品の包装袋には保管上の注意事項が次のように記載されています。「雨や直射日光を避け、高温にならない、且つ冬期に凍結しないところに保管してください。」などです。これには次のような理由があります。

まず、雨に関してです。培土の包装袋には空気を抜くための穴が開いていることがあり、そこから雨水が染み込むと培土の物理性が損なわれ、使い物にならなくなってしまいます。赤土の高温殺菌粒状土などが固まる原因にもなりますので、園芸・水稲など用途を問わず、雨が当たる場所に保管するのは避けていただきたいです。

次に、直射日光です。日光に当たると紫外線でポリ袋が劣化し、袋が破れる原因になります。また、日光や外気による温度変化は、培土内の水分の偏りを引き起こします。袋の内部が暖められると水分が蒸発し、夜などに気温が下がるとポリ袋の内面に結露が生じます。これが繰り返されると、袋の中に極端に乾燥した部分と、湿った部分が存在するようになります。 この水分の偏りは、ピートモスを含む培土にとって死活問題です。ピートモスには乾燥すると水をはじく性質があるので、乾燥した培土が水をはじいて苗の生育不良が発生するおそれがあります。撥水防止剤などを配合してある製品もありますが、その効き目も半年~1年程度で失われることが多いと思います。ピートモスを多く含む培土は翌年への繰り越しはできないと考えた方が無難です。

以上が一般的な原則です。培土は倉庫などの屋内で温度変化の小さい環境に保管していただくのが良いと思います。

園芸培土を長期保管した場合の影響

園芸培土にはピートモスが配合されている可能性が高いので、長期保管されていた培土は乾燥して水をはじくようになっている恐れがあります。育苗を開始する前に、ポットなどの容器に詰めてかん水してみて、培土の中心まで水が充分に浸透しているか確認すると良いです。透水性の低下した園芸培土は、水がまったく染みていかないことも多いので、そのような培土は使わないようにしてください。もしも、どうしても使わなくてはいけない場合は、新しい培土に少量ずつ混ぜて消化するか、市販されている園芸用の界面活性剤(透水剤)を使うなどの方法があります。

また、園芸培土には宿命ともいえる経時変化があります。それは、窒素成分が水に流れやすい形態に変化するというもので、栽培中のかん水量が多い場合は肥料が流れ落ちて、肥料切れが早くなってしまいます。もっとも、そういう性質を踏まえたうえで使えば、新しい培土に劣らない苗を育てることも可能です。容器の底の穴から水が抜け落ちるほど多量のかん水をしないようにすれば、培土の中に残った窒素を最大限に活用することができるでしょう。(詳しくは、当ブログの記事「いつもより肥料切れ早くない!? ~園芸用培土の硝化作用~」をご覧ください。)

水稲培土を長期保管した場合の影響

軽量培土(サラサラホーネンス培土1号など)は、ピートモスの使用割合が高いため、園芸培土と同様に乾燥による撥水のリスクがあります。前年の培土は全く水を吸収しないこともあるので、「軽量培土は翌年への繰り越しはできない」と考えた方が無難でしょう。「園芸培土として使えますか?」というご質問もいただきますが、水稲培土と園芸培土では肥料の設計が全く異なるため、流用するのは難しいと思います。どうしても使わなくてはいけない場合は、新しい土に少しずつ混ぜて消化してください。

ホーネンス培土1号のような粒状土(赤土)主体の培土は、比較的、保存性に優れていると言えます。ピートモスの使用量が少ないので、水をはじくリスクが小さいですし、pHが5.0前後と酸性寄りなため窒素の形態変化(硝化)もほとんど起こりません。ただし、水分が偏っていると、粒子の崩壊や固まりが発生する原因となりますので、開封した培土に極端に濡れた個所や乾燥した箇所が無いか確認すると良いでしょう。

高温殺菌してある水稲培土でも、長期保管した場合、カビのような物質が発生する場合があります。粒状土を高温殺菌し、水稲育苗に有害な菌を死滅させていますが、完全な滅菌状態というわけではありません。ごく稀に、耐熱性の高い放線菌やペニシリウム族菌などが培土の袋の中で繁殖し、コロニーを形成する場合があります。これらは水稲の育苗には問題のないものであるケースがほとんどですが、心配であれば殺菌剤などの防除を検討すると良いと思います。

使用上の注意をよく読んで

いかがでしたでしょうか。培土の役割は育苗を完全に成功させるベース(基盤)を作ることだと思います。培土の性能が充分に発揮されるように、上記の内容をふまえてお取り扱いいただけると幸いです。取扱いや保管に関する注意事項は製品の包装袋に記載されていることが多いので、ご使用前によくお読みいただければと思います。

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