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花と野菜の培養土

ひとくくりにできない!? 花と野菜の培養土

培養土は千差万別

皆さんは、花と野菜の培養土をどこで購入されているでしょうか。JA店舗や農家の店、ホームセンター、大口の生産者さんにはメーカー直送という方もいらっしゃるかもしれません。多様なルートで培養土が流通しているわけですが、その中身はじつに様々です。プロ向けと家庭園芸向け、花用と野菜用では求められる性質が根本的に異なります。これは良し悪しの問題ではなくて、目的と用途が違いすぎるため、ひとくくりにできないというのが現状です。

家庭園芸の理想は「よく育つ」

ホームセンターの家庭園芸培養土のコーナーに行くと、色とりどりの写真で飾られたパッケージが並んでおり、いかにも「植物が元気に育ちそう!」といった感じがします。この「よく育つ」とは、「プランターなどにポットの苗を植えたときに大きく育つ、または多くの実をつける」と、ほぼイコールだと思います。この場合、培土の設計は①大きな容器に入れるので水はけが良いほうがよい②元肥の量は多いほうが良い③肥料が長持ちしたほうがよい④低コスト、などの条件で決まってきます。これらを実現する最もシンプルかつ効果的な方法は、中熟程度の堆肥類を相当量(2~4割程度)配合することだと思います。堆肥類は微生物の活動によってじわじわと変化し、チッソ成分などを発現(土壌に出すこと)させます。うまくいけば追肥などが不要なこともありますが、この性質(チッソ成分の無機化といいます)は温度やpHなどの条件にかなり左右されます。さらに、培養土を在庫している間に袋の内部で変化が進んでいる場合もあり、肥料が効くか効かないかはある意味「運まかせ」と言えるでしょう。

プロ用培養土の理想は「コントロールできる」

これに対して、プロ用培養土の場合はどうでしょうか。プロ用培養土は、ポット苗やプラグトレー苗の育成に使用されることが多く、植物を効率的に大量生産できることが非常に重要です。この場合、①生産ロスが少ない②植物の生育に大小・遅早の差が無い③使用にかかる労力が小さい④低コスト、などが重要です。スケジュールどおりに規格のそろった苗を出荷しなくてはいけないため、苗の大きさや生育スピードが完全にコントロールできるのが理想と言えます。同じ培土を使用していれば、いつでも、常に一定の生育パターンを示すのが良い培土だと言えます。

そのためには、使用する容器(ポットやプラグトレーなど)に最適な組成(粒子や素材、肥料の組み合わせ)であることと、それらが均質に混合してあることとが重要です。例えば、ホーネンアグリのプラグトレー専用培土はピートモスを中心にかなりキメの細かい組成になっています。また、肥料の効き方が運まかせであってはいけないため、チッソ成分の効き方が環境に大きく作用される堆肥類はかなり慎重に用いることが重要になります。

培土選びは、用途に応じて

一般的に、プランターよりもポット、ポットよりもプラグトレーのほうが容積が小さく、植物1株あたりの培土の量が少ないため、培土の吟味をより厳密に考える必要があります。また、作物によって肥料成分の要求量は異なっており、例えば花やイチゴを育てる培土の場合は、活着(新しい根が発生して培土に根付くこと)までは肥料成分が少ないほうが良いことが多く、野菜の場合は逆に肥料が多いほうが好まれる場合が多いです。(例えばナス科の作物の育苗機関は30~40日程度と長期間ですし、ネギの育苗はさらに長期におよびます。こうした作物では緩効性肥料も用いられる場合があります。)

培土選びは植物の生育に直結する要素ですし、種まきや育苗は「苗半作」または「苗八分作」と言われるほど、農業生産の成否にかかわる重要な工程です。用途や作物に応じて最適な製品をお選びいただき、豊かな実りを実現していただきたいと思います。

株式会社ホーネンアグリ営業部 坂野(土壌医)

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